ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori、H.pylori)
最近ではマスコミでも取り上げられることが増え多くの患者様もご存じのピロリ菌です、ピロリ菌の起こす病気や除菌療法について質問を受けることも多く説明させて頂きます。
ピロリ菌は胃に感染するとそのまま胃に住みつき、胃に慢性炎症(感染→急性胃炎→慢性胃炎→萎縮性胃炎)を起こします。この胃の炎症を背景に胃・十二指腸潰瘍、胃がん、胃MALTリンパ腫、胃過形成性ポリープなど胃の病気を引き起こします、また、胃外の病気である特発性血小板減少性紫斑病、慢性蕁麻疹、小児の鉄欠乏性貧血にも関係していると言われております。日本人で50歳以上では80%が感染しています。
保険診療による除菌適応
現在の日本の保険医療では胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、早期胃がんの内視鏡的治療後の異時性胃がんの発生抑制、特発性血小板減少性紫斑病、ヘリコバクターピロリ感染による胃炎が保険診療に認められております。ただし、ヘリコバクターピロリ感染による胃炎の場合は内視鏡検査を受けていることが条件となり内視鏡検査を受けてない場合は自費となります。
学会による除菌適応
ヘリコバクター・ピロリ除菌後は除菌前にくらべて胃がんの発生が約1/3に減少するなどのことから、日本ヘリコバクター学会が発表している「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン」2009年改訂版ではすべてのピロリ感染症が除菌の対象疾患としています。そのため上記以外の疾患で除菌を希望される方は自費診療(保険外診療)で除菌される方が増えております。
除菌療法の注意点
(ア) 保険適応が無い場合は全額自費になります。
(イ) 副作用として下痢・軟便(10〜30%)、味覚異常・舌炎・口内炎(5〜15%)、皮疹(2〜5%)、顔のほてり等があります。
(ウ) 除菌薬を飲みきることが重要であり、重篤な副作用以外は飲み続けることが大切です。副作用などの症状が出た場合は速やかにご相談くださいますようお願いします。
(エ) 除菌薬内服中・内服後3日間は禁酒が必要です。除菌成功率が減少したり、副作用が出やすくなるからです。
(オ) 耐性菌の問題から除菌成功率が90%前後で必ず除菌成功するわけではありません。
(カ) 除菌により胃がんの危険は1/3にはなりますが完全に予防できるわけではなく定期的な胃がん検診は必要です
(キ) 除菌しても胃炎などの症状が改善しないことがあります。
(ク) 除菌後に胃酸を中和していたピロリ菌がいなくなることによると思われる、胸やけなどの逆流性食道炎症状が出現する可能性があります。
(ケ) 除菌後に食欲が増進して体重が増加することがあります。